自己紹介やこのブログについて
こんにちは。
このブログは『あなたの"ふつう"をあつらえる』未来食堂が開店するまでの日記です。
ここでは簡単なご挨拶を。
自己紹介
名前:せかい(本名)
「お店」と自分
「お店を持つんだ」と決めたのは15歳、人生で初めて一人で喫茶店に足を踏み入れた時でした。
「こんな店をやるんだ」という思いは今から考えると、「学校の自分」でも「お家の自分」でもない、 ”自分”そのままが在り、それを受け入れてくれた感覚から生じたものでした。
それから、人を受け入れる場所を作る小さな実験を重ねていきます。
高校生の時に教室でこっそりと珈琲ブースを作ったり、
20歳の誕生日から新宿ゴールデン街のカウンターに立ち、歌舞伎町のバーで幾つか働き、
大学の時は一年次から個人的に喫茶店を出店していました。
(この喫茶店は有難いことに反響を呼び、4年時には4大学で出店しました)
細く長くではありますが、「いつかはお店を出すんだろうな」と思い過ごしていました。
「食」と自分
歌舞伎町のバーで働いていたある日のこと、そのバーの寮に招かれ夕食をごちそうになりました。
出勤前でバタつく中、その日の食事当番のお姉さんが大鍋で煮物を作っています。
それぞれが座って思い思いに皿によそい、「頂きます」の合唱のもと食べ始めた時、なぜだか自分は涙が出てきてどうしようもありませんでした。
故郷を離れ一人暮らしとなり、人と一緒にご飯を食べることが、すうっと心に染み込みました。
俯いたまま食べ終わり、その時はなんとか乗り切った気がしましたが、それからずっと後に「あの時せかいさんがすごく神妙にご飯を食べていて、それがすごく印象に残っています」とお姉さんに言われ、照れくさく思ったものでした。
少し時が戻りますが、高校生の頃、進路や色んな事が分からなくなって2ヶ月家出をしていた時がありました。親元どころか全てから断絶され新しい生活も始まりアパートも借りて、『自分はこうやって繁華街の裏側で死んでいくんだろうなあ』と疲れきった頭でぼんやり考えていた頃、戻るきっかけになったのは、その時偶然居合わせた人たちとテーブルを囲み「頂きます」と皆で言った瞬間でした。『こうやって人とともにいることが、やっぱり自分には必要なんだ』と衝撃のような気付きがあり、その日の夜に家に帰ると電話をしました。
こんな風に「人と人がいて卓を囲む」に深い思い入れのある自分が、しかしすぐ『食べ物屋をやる』と思わなかったのはいくつか理由があります。
「偏食」と自分
自分は、基本的に気に入ったらそれしか食べない傾向があります。
大学の時は1年間ざるそばとシリアルしか食べなかったし、新卒研修の2ヶ月では昼食にヨーグルトしか食べていなかったっけ。。
「美味しいもの!美味しいものはどこだ!」みたいに前のめりに”食”を消費するような感覚がすこし苦手なところがあります。
『「有機野菜」とか「○○産プレミアム豚」とか、そんなのどうでもいいやん、大切なのはその食卓に”人”がいるか、思いがあるかだよ』という思いがある自分が、
この○○が美味しいんです!食べてみてください!のような、いわゆる食べ物屋が出来るイメージはありませんでした。
美味しいよって差し出して、笑われたらどうしようという不安が何処かにあります。自分は普通と思っていても、豆腐に何も付けずに食べていたら笑われたり、ランチが豆腐だけだったらまたそれで笑われたり…。少しビクビクしながら差し出すのはしんどい。正直今もこの感覚は変わらずあります。
でも、 ”人と共にいる” こと、 ”それが食卓である” こと。この2つは自分の大きな原体験になっています。
『美味しいもの』ではなくて『その人にとって美味しいもの』を出すお店はどうだろう。今の消費型の”食”に疑問を持つ自分だからこそできる食べ物屋は無いだろうか。
この気付きが、未来食堂の始まりでした。
(もっとも今は意識的に食に取り組んでいます。ちゃんとなんでも美味しく作れるので心配しないで下さい。。たはは)
経歴:神戸女学院中高等部、東工大理学部数学科卒後、日本IBM&クックパッドで計6年間エンジニアとして勤務。
現在は未来食堂開業にあたり、様々な厨房で修行を積む。
未来食堂とは
未来食堂は、お客様の好みの食材や気分によっておかずをあつらえる定食屋です。
一人一人におかずのあつらえなんて、無理じゃないの?と思われるでしょうか。
このブログでは未来食堂の実現可能性についても解説していきます。
どうぞお楽しみ下さい。
アイデアストーリー
未来食堂のコンセプトは「あなたの”ふつう”をあつらえる」です。
現在の飲食業界は「お客様の好み・ニーズに合わせたメニューを提供する」という競争を繰り広げています。その結果、多くの専門店が立ち上がり、数多くのメニューが並ぶようになりました。好みを細分化し、些細な違いを縫ってお客様にアピールする。このような既存の飲食業界に疑問を呈し、未来食堂はスタートします。
未来食堂では通常のメニュー(唐揚げ定食や焼魚定食など)に加えて、以下のような”あつらえ”が可能です。
・希望する材料を使ったおかずの提供
・気分や体調に合わせたおかずの提供
未来定食の”あつらえ”は、凝ったものではなく、ささやかな手間を加える程度です。しかし、お客様の要望を真っ直ぐに取り入れた、そのお客様 ”だけ” の一回性のあるおかずとして、特別感のある物となります。凝ったものを出す付加価値よりも、「自分だけに提供された1品である」嬉しさを付加価値とし、廉価なままで、高価格帯飲食店のようなサービスを提供します。
古来、オーダーメイドという概念は ”あつらえ”と呼ばれていました。未来食堂では、この美しい日本語のもつ雰囲気を大切にします。
現代の日本の飲食店には以下の”常識”が存在します。
・飲食店では、誰がいつ頼んでも「同じもの」を提供するべき
・メニューが多ければ多いほど、お客様の好みに沿った食事を提供できる
未来食堂はこのような既存の常識からスタートしません。しかし、 ”ふつう”(=そのお客様にとって当たり前のこと)をあつらえるとは、奇をてらった有り様でしょうか?
目の前にお客様がいて、そのお客様が何を望んでいるか、どのような心持ち・体調でいるのか。何か自店が出来る事はないか。そのように真正面から相手のことを考え、望む1品を提供する。そこにはどこか、今のような高度に発達したコミニケーションやインターネットが現れる前の、人が人と接していた時代の懐かしい趣があります。
現在、飲食業界では仕入れや仕込みの問題から、一人一人に合わせたサービスは困難です。しかし、マス・カスタマイゼーション(※)が勢いを見せる現在、未来食堂のあり方は受け入れられると考えています。
『新しいけれども懐かしい』『今はまだ一人一人を気にかけた飲食店は無くても、きっとこれからはこういう形の店が増えていくはず』。そう考えたとき、「食堂」という懐古的な単語と「未だ来ていない」という意味の「未来」を組み合わせた「未来食堂」を店名にしました。
※マス・カスタマイゼーション:マーケティング、製造業、コールセンター、経営戦略論における用語。低コストの大量生産プロセスと柔軟なパーソナライゼーションを組み合わせたサービスを指す
事業目的
「あなたの”ふつう”をあつらえる」はある意味、行動のコンセプトに過ぎません。
お客様の”ふつう”をあつらえることにより、私が実現したいことを記載します。
人は一人一人、望むあつらえが異なります。しかしその内容を聞いてみると、驚くほど平凡な事が多々あります。「卵焼きは甘めが好き」「ラーメンは餡かけよりも普通のスープが好き」「胡麻和えは甘くないほうが好きだ」等。
つまりお客様は、一人一人が特別な存在でありつつ、同時にとても平凡な存在です。
あるお客様にとっては ”特別な” 一品として提供したものは、同時に誰かの ”ふつう” でもあります。例えば、ある方の要望を聞いてあつらえた「やや甘くした卵焼き」の余りを、次の方の小鉢に添えて出しても、特別性はなく普通の一品として映ります。誰もが特別なもてなしを受け、かつ、誰もが ”ふつう” なのです。
『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』
これが未来食堂の根底にあるメッセージです。
人と人との結びつきが希薄化している現代日本において、未来食堂では、来店されたお客様と真正面から向き合い、”その方にとって” 良い物を提供する。スケールは小さいながらも、このような豊かな場所をこの国に存在させること・知らしめることが、未来食堂の事業目的です。
行動のコンセプト:
あなたの”ふつう”をあつらえます
思想のコンセプト:
誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所を作ります
信念:
人は一人一人が特別であり、同時に平凡な存在である
ご覧いただきありがとうございました。いつか、お会いしましょう。
http://miraishokudo.com/