料理人が教える、卵焼きの作り方
こんにちは。
このブログは『あなたの"ふつう"をあつらえる』未来食堂が開店するまでの日記です。
自分が流しの料理人(色んな家庭に行ってその家庭に合わせた料理をつくること)をしている時によく頂くコメントが、『フライパンでも卵焼きって焼けるんですね』というもの。
卵焼きを焼く専門の”卵焼き器”を持っているご家庭は少なく、必然的にフライパンで玉子焼きを焼くのですが「卵焼きって難しくって自分には出来ない」と、よくコツを聞かれます。
そういえば某料理代行スタッフ登録時にフライパンで卵焼きを焼くという試験もありましたっけ。
そんなわけで今日は、よく聞かれる”卵焼きの作り方”について、せっかくなのでとことん語ってみたいと思います。
卵焼きとは
溶き卵に調味料を混ぜ合わせ、薄焼きにしたものを丸めて筒状にしたものです。
なぜ卵焼きは難しいのか
薄焼きにした卵を巻く時に崩れやすいため、また、火力の調整が難しく焦げやすいためです。
失敗しないコツは?
油を多めに引く
プロ(飲食店)はたくさん油を使います。見た目の綺麗さも商品のうちであるため、焦げ付き防止に油は欠かせないのです。そうは言っても自分が作って自分が食べるとなると油を減らしたいのが人情。何回も焼いて最低限必要な油の量を会得するか、テフロン加工の卵焼き器を使いましょう。
(補足)卵焼きと厚焼き玉子の違い
「出汁が入っているかどうか」が成分上の違いですが、出来上がりも異なります。
一般的に厚焼き玉子は焦げ目を付けません。
卵焼きに焦げ目をつけるか否かは好みがありますが、個人的には『焦げ目をつける→卵焼き』『焦げ目をつけない→厚焼き玉子』という区別をしています。なので焼き方(火加減)が異なります。
道具
卵焼き器
自分が使っているのは極ROOTSの卵焼き大。
大きいですが何十人分も焼くのでこの業務用サイズがかかせません。
極ROOTS たまご焼 大
焼き上がりのイメージ。卵焼きが8つ出来ます。使用する玉子は2.8個分くらい。
通常の卵焼き器(極ROOTS卵焼き小)だと5切れ分程度かな。使用する玉子は2個分くらい。
極ROOTS たまご焼 小
並べてみるとこんな感じです。
極ROOTSがオススメの理由
軽くて扱いやすく、持ち手が木で持ちやすく、持ち手がネジ一体型なので緩んでくると道具なしにすぐ締め付けることが出来ます。
度々このブログにも登場している愛用の中華鍋、こちらは28センチのもの。
極ROOTS 炒め鍋 28cm
かっぱ橋などで売っている無骨な中華鍋はとにかく重いんですよね。
炒め鍋を買って信頼していたので、卵焼き器もこちらで大小揃えています。
テフロンと違って熱の通りがいいので卵焼きがしっかり膨らみます。
テフロン
テフロンは、焦げにくく油が不要というメリットが有ります。
反面、テフロンが傷まないよう火力を抑えないといけないため、かつ、火の通りが良くないため、タマゴが膨らみきらず、コシが活かしきれない食感になります。例えるとおぼろタマゴ寄せのような感じです。極端ですけれどね。
鉄
鉄は火力がダイレクトに伝わります。コシがありしっかり目の卵焼きになります。基本的に焦げ目はつきやすく『虎焼き』のような印象になります。
銅
銅だとふんわり焼けるので厚焼き玉子に適しているという性質があります。
銅の卵焼き器も良さそうですが、一番のネックは柄の構造。
こういう差し込み式の柄は使っているとぐらついてくるんですよね。未来食堂が始まれば毎日使うし。。
EBM 銅 玉子焼 関東型 21cm
この持ち手がぐらぐらしてくるのよね。。
でも銅は使ったことがないし一度は試してみよう。
ゴムベラ
菜箸で卵を触っていると破けやすく、慣れないうちは上手くいかないものです。
その点、”へら”状のものだと巻きやすいです。
卵焼き器&ヘラの組み合わせは、雑貨店でもよく見かけます。
グッドエッグ お弁当グッズ 卵焼器 アーネスト :3590731:生活便利雑貨店 - 通販 - Yahoo!ショッピング
上記のような専門のヘラ(卵焼き器と幅が同じもの)を買うのもいいですが、個人的におすすめはこちらのヘラ。
タイガークラウン ウィズ シリコンゴムヘラ 大 1610
かっぱ橋で買ったものですが、適度な重さとしなりが丁度いい感じなのです。
しゃもじの代わりに使ったりソースをかき集めたり、、使い方は無限大。
このゴムベラがないと料理ができないといってもいいほど愛用しています。
(料理代行をしていて、先方のご家庭が『なにかせかいさんの使いやすい料理用具を買ってあげましょう』と言ってくださった時は、必ずこのゴムベラをリクエストしています。それくらい使い勝手がいいです。
このゴムベラは最後に成型するにも使います。
どう使うのか、、それはこれから作り方の中で見ていきましょう。
作り方
卵液を作る
みりんに砂糖、塩を溶かし入れ、溶かしてから卵を入れていきます。基本的に醤油は入れません。茶色くなって見た目が悪くなるためです。
みりんを入れると、卵焼きの黄色味が強くなりおいしそうになりますよ
調味料を先に溶かしましょう
→溶けてないまま卵を混ぜると、混ぜ込みが不足し、調味料が下に溶け残ってしまいます。
溶けにくい場合は少量の水やだし汁を入れても大丈夫です。ここで「出汁」を混ぜると厚焼き玉子になります。厚焼き玉子のほうが焼くのが難しくなります(水分が入るので固まりづらいのです)。
今回は”卵焼き”ですので、出汁は混ぜずに調味料だけ(水分のないパターン)で卵液を作ります。
卵は一つ一つ別容器に割り入れること
→殻が入っていないかを目視確認しながらボウルに入れていきます。
これで玉子30個位
ちなみにタマゴの容器は半分にちぎって重ねて捨てましょう。
小技ですが、ゴミの量が違ってきます。
卵を混ぜる
箸で卵白を切るように混ぜます。
持ち上げてぷつんと切る、を繰り返しましょう。
完全に混ぜるのは錦糸卵を作る時だけです。卵焼きは、タマゴのコシも美味しさのポイントなので、完全にまぜることはしません。
油をひく
キッチンペーパーに油を吸わせ、油を引きます。
ヘリにも油をひくことがポイントです。
きちんと油を引かないとヘリにくっついてしまいます。
油は”油引き”を使ってもいいのですが、キッチンペーパーで大丈夫ですよ。
”油引き”とはこういうやつ。たこ焼きの屋台で見かけますね。
温める
フライパンをしっかり温めましょう。
温まると、フライパンの上の油がぬめっとした感じになります。
手のひらを上にかざして”熱いなー”と思えたら完了です。
煙が出るまで温めるのはNGです。
煙が出るのは、鉄フライパンを保護している油面を痛めているから。あまり良くありません。
テフロンでも厳禁です、テフロンが傷んでしまいます。
卵液を流し込む
”ジュッ”と音がしたら温め成功です!
火は中火より少し弱いくらい。あんまり強いとこげてしまうし、弱いと卵液が上手く膨らみません。
表面が半熟になるまで過熱する
このくらいになるまで加熱します、出てくる気泡は箸の先で潰しましょう。
気泡が出ていない場合は火が弱すぎます。
向こうから手前に丸める
表面がこれくらいになったら箸を使って手前に丸めていきます。
卵焼き器を振って丸めていく方法もありますが、慣れてなければ写真のように斜めにするだけでいいと思いますよ。
私もこの業務用サイズは重いので、振って折り返すことはしていません。卵焼き器を斜めにしてつついて転がしています。
少々崩れても気にしない。
ちなみに、手前から向こうに丸める方法は関西式です。
卵焼き器には関西式と関東式があり微妙に縁の形が違います。
油を引き直す
もう一度卵液を流し込み、向こうから手前に丸めます。
その前に油を引き直しましょう。
玉子焼の芯を向こうに移動します。
再び卵液を流し込む
卵液が多すぎた場合は縁から戻して大丈夫ですよ。
卵焼きの芯を持ち上げて、下にも卵液を敷いていきましょう。
向こうから手前に丸める
丸めにくい時はゴムベラを使って回転させます。
成型する
巻き終わったらヘリに押し付け形を整えます。
ゴムベラを2本使っていますが、木ベラなどでもいいかと思います。
ただ、ゴムベラだとしなりがあるので細かい調整がしやすく、ゴムベラ2本使いにまさるものはないと個人的には思います。
卵焼き専門店などでは、成型用の木蓋を使うようですがわざわざ買わなくてもあるもので大丈夫です。
冷ます
焼きたてはまだ柔らかい状態です。
放置することで蒸気が抜け予熱も通ります。
キッチンペーパーなどを敷いて、下に蒸気がたまらないようにしましょう。
写真の左側は冷めたもの、右側は焼きたて。
こうやって並べてみると大きさの違いが分かります。
コゲのようにみえるかもしれませんが、表面にマダラが付いているだけなので、切るとこんな感じで鮮やかな黄色が映えます。個人的には茶色と黄色のコントラストが素朴で美味しそうかなと思います。
切る
十分に冷めたら切っていきましょう。
(これはだし巻き風であまり焦げ目をつけていないもの)
ちなみに使っているペティナイフはこちら。
ヴェルダン ペティナイフ 125mm OVD-13
ペティナイフについては使い比べをしたことが無いので強くは言えないのですが、
切れ味の持ちが長く、刃が薄く軽い(細かい作業に最適)ので、かなり気に入っている一本です。
他のを使うことは無いと思います。
まずは端っこ(耳)を切り落とします。
耳は硬く食感が悪いためです。
残りを等分していきます。
こういう幅のあるものを等分するときは、まず二等分(真ん中を切る)といいですよ。
出来上がり
色々書きましたが、わかりにくい所あればどうぞ教えて下さい。
未来食堂では毎食、ミニサイズの卵焼きを小鉢で付けようと考えています。
この記事を読んだ人とそんな話で盛り上がったら楽しそうですね。
ご覧いただきありがとうございました。いつか、お会いしましょう。
http://miraishokudo.com/