食材のおくりものについて思うこと(毎週木曜の伊豆大島デーについて)
こんにちは。
このブログは『あなたの"ふつう"をあつらえる』未来食堂が開店するまでと、その後の日記です。
今日は未来食堂で毎週木曜に行っている『伊豆大島デー』についてお話しようと思います。
どうして伊豆大島?
お客様からもよく聞かれるのですが、東京愛らんどの方が、伊豆大島の野菜を毎週送ってくださっているためです。未来食堂の取材記事を見た東京愛らんどの方が、未来食堂を面白がってくれ、島のPRとして生産物を送ってくださったのがキッカケでした。
未来食堂について知ったのは去年、ネットの記事が拡散されているなか、SNSで知りました。ユニークなお店だなと思って、食後、ほかにお客様が誰もいなくなったときに、私たちがいまどんな活動をしているのか、小林せかいさんとお話をさせて頂き、島おこし!おもしろそう、やってみたい。とご賛同頂きましたので1月~2月水曜日は伊豆大島椿まつりの時期にあわせて、島の伝統衣装を着てまかないをやらせていただきました。
伊豆大島の農産物販売所「ぶらっとハウス」から毎週水曜日に島野菜を差し入れして、みなさまに、東京都なのに(沖縄やハワイなんかよりもずーと認知度の低い)伊豆諸島について、「食」を通じて知ってもらいたい、興味をもってもらいたいという気持ちでコラボすることになりました。
大島については2月までの予定でしたが、お客様からの感想ノートに現地の農家さんが感銘を受け、3月以降も継続することになり、毎週木曜日に島野菜を使った定食を出し続けています。
東京都島しょ振興公社の広報活動チームの方のメッセージです。有難い限りです。
送られてくる野菜を使った副菜
送られてくる野菜は毎回異なります。
こんな風に島の野菜が毎週届き、それを使って小鉢を作っています。
何が送られてきてどんな風に料理したか、お便りを書いてカウンターに貼っています。
忙しい朝の時間に、調理をしてお便りを書いてコピーして切り赤線引いてカウンターに貼り付けるのは正直楽では無いのですが、ご厚意に応えるためにはこれくらいは当然かなと思っています。
いつも心がけているのはどうすれば頂いた野菜が映えるだろうかということ。例えば『お味噌汁の具として色んな野菜と混ぜ込みました』というのと『頂いた絹さやの緑や艶を活かして絹さやのおかか和えを作りました』というのでは、圧倒的に後者のほうが丁寧に食材と向き合っています。
ただ漫然と作るだけではなく、素材の形、色、味、旬と向い合って一番いい形を探ります。何が届くか分からないけれど良い物を作らないといけないプレッシャーを感じつつ、日常の業務に加えてこれらをこなします。
期間が5末まで延長
元々は先月末(2016年2末)までの予定だったのですが、愛らんど様や島の生産者様のご意向もあり5月末まで、旬の島野菜が送られることになりました。「未来食堂は丁寧に料理してくれるから」とのコメントを頂いた時は、本当に料理人冥利につき、『伝わってくれてよかった』と心から安堵しました。
※諸事情により変わるかもしれません。今のところ5末です。
『料理』と未来食堂
「涙が出そうになるほど嬉しかった」と言えば、大げさだと感じられるかもしれません。
それは未来食堂の背景によります。
未来食堂は、そのシステム(”あつらえ”や”まかない”)や私の経歴(数学科→ITエンジニア→定食屋)ばかりに焦点が当たり、『料理』についての思いが置いてけぼりになっている感じがあります。
これは、美味しさを定義しない未来食堂ならではの立ち位置ゆえもあるのですが、さりとて頑張っているものに対しての反応がないというのは、耐えてはいるけどやっぱりしんどいなと思うこともあります。
未来食堂は”あつらえ”を通してお客様の美味しさを作ることに価値がある。「○○が美味しい」「○○を☓☓しているから美味しい」などとプレゼンすることは店側の美味しさを押し付ける従来の飲食店の在り方と変わらない。飲食店にとって美味しさをアピールできないことはある意味致命的であるが、来てくださったお客様自身に評価していただくことをゴールとし、未来食堂側からは一切広報しない。耐えること。
取材を依頼されたメディア様へ - Google ドキュメント
『システムは面白いけど味はどうなんだろ?』みたいなコメントを見るたびに、『頑張っているよ!』と言い返したくなるのですがそれはぐっと我慢というか。
そんな中で「丁寧に料理してくれてありがとう」という言葉は本当に嬉しかった。分かってくれて良かったと思いました。
予定よりも長期間、野菜を送り続けてくれるのですから信用もされているのだと思います。
これからもより真摯に、送られてくる食材と向かい合おうと思います。
料理を「食材」✕「仕事」に因数分解して、「食材」によるアピールはしないと決めている(※1)ため、伊豆大島からの野菜が食べられるから来て下さいとはあまり大きく言えませんが、丁寧に試行錯誤して仕事をしているので、それを楽しみに来てくだされば嬉しいです。
ちなみに3末までは八丈島の特産品(島レモンジャム・ジャージ牛乳)を使ったデザートをお出ししており、こちらも戴き物で、有難い限りです。
※1:どんな食材でも美味しく料理できることが料理人の本質だとして、食材をアピールする昨今の在り方は料理人を小売り人に変質させていると思うので。
色んな方が加わって未来食堂が良くなっていくことは嬉しいなと思います。
ご覧いただきありがとうございました。いつか、お会いしましょう。
http://miraishokudo.com/